ChemistryEurope誌にステロール類の酸素酸化および真菌から発見された天然物の合成と構造決定に関する論文が掲載されました!
- Kobayashi Shoji
- 11 時間前
- 読了時間: 3分
2026年もあっという間に折り返し地点。
4年生も実験に慣れてきて、研究室全体が活発になってきました。
さて、キノコの生理機能に関わるステロール類の合成に関する研究成果が、Wiley出版社のフラグシップジャーナル、ChemistryEurope 誌に掲載されました!
Bioinspired Aerobic Oxidation to Functionalize the CD Ring of the Steroid Framework: Synthesis and Stereochemical Assignments of Gargalol C and Related Oxysterols
Hinata Togo, Yui Kanda, Shoji Kobayashi*
原著論文はこちら。(オープンアクセスです)
ステロール類は真菌類(カビやキノコ)が産生する主要な成分の一つで、キノコの味覚や効能にも深く関わっていると考えられます。
私たちは、2025年の論文で、生合成前駆体と考えられるエルゴステロールから、生体環境に類似した反応条件を使って直接的かつ網羅的に菌類のステロール類を合成し、合成した化合物のいくつかに認知症の原因となるβ-アミロイドの凝集を抑制する効果があることを見出しました。
今回の成果は、その継続課題にあたります。
菌類が産生するステロール類の構造が多様なのは、菌体内での酸化的な代謝によってステロイド骨格の各部位が酸化され、それに伴い様々な官能基変換や結合の切断・生成が起こっているためと考えられます。
私たちは、独自に考案したステロール類の生合成仮説に基づき、前例が殆どないステロイド骨格のCD環に酸素官能基を直接付与する方法を検討し、結果的にステロイド骨格の8位、9位、11位、14位、15位(いずれもCD環上)に水酸基を直接的に導入することに成功しました。
特にラジカル条件での酸素酸化では14位のみが選択的に酸化されることを見出し、酸素が導入される方向(立体化学)も完全に制御されることを発見しました。
一般にステロール類は炭素数が多く、構造も複雑であるため、母体生物から発見した科学者が、立体化学も含めて正確に化学構造を決定するのは容易ではありません。
今回の研究では、信頼できる合成手法によってCD環が酸化された様々な分子を供給し、その全ての構造を2次元核磁気共鳴や単結晶X線構造解析によって確実に決定しました。
特に議論の的となる第四級炭素中心(8位、9位、14位)の立体化学を完全決定し、その分光データを開示できたことは、今後、未知のステロール類の構造決定に必ず役立つと思われます。
さらに、CD環を酸化した分子から、食用キノコであるシイタケやアンニンコウに含まれる酸化ステロール類を合成し、それらの立体構造を初めて明らかにしました。
合成分子の一つであるガルガロールCには破骨細胞の形成を阻害する活性が見出されており、今回の成果は、将来的な骨粗鬆症薬の開発にも役立つかもしれません。
私たちの研究は化学合成ですが、全体的には、分子の本質的な反応性に沿って、酸素や鉄イオンなどの生体内に存在し得る化学種を利用して化学変換をしています。
従って、本研究の成果は、未だ実証されていないステロール類の生合成経路の解明にも貢献するものです。
論文内容を裏付けるサポーティング・インフォメーションは、スペクトル部分を除いて40ページあり(スペクトル込みで134ページ)、補足実験の情報もたくさん載せました。是非こちらもご覧ください。
実際に実験に携わったのは、今年3月に修士修了した東郷ひなたさんと、現在M2の神田優衣さん。
日々コツコツと合成実験をこなし、構造が似ている生成物を卓越した精製技術で分離、構造決定してくれました。
ときには不安定な生成物を扱い、その生成物が分解して何度もくじけそうになったと思いますが、諦めずに最後までよく頑張りました。
2人ともお疲れ様。そしておめでとう!
神田さんは修士修了までもう少しあるので、次の目標に向かってまた一緒に頑張りましょう!
梅雨時期でスッキリしない天候が続きますが、社会に貢献できる良い研究成果を上げられるよう、研究室一同、引き続いて頑張ります!




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