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J. Nat. Prod.誌にヤマブシタケの未解明成分の発見に関する共同研究論文が掲載されました!

執筆者の写真: Kobayashi ShojiKobayashi Shoji

更新日:1月31日


少々遅くなりましたが、新年おめでとうございます。

研究室は1月6日(月)にスタートし、学生諸君は修論・卒論に向けてハードな毎日を過ごしています。


さて、昨年末に、静岡大、宇都宮大、京都府立大との共同論文が掲載されました!

原著論文はこちら


私たちの研究室では、ヤマブシタケに含まれる活性成分(ヘリセノン類)を化学合成によって供給することに取り組んでいますが、2021年に報告した論文で、神経保護活性のあるヘリセノンZの合成を報告しました。その論文で、ヘリセノンCからヘリセノンZに至る詳細な反応機構を示し、さらに副生成物として単離したクロマン型分子やフラン型分子の合理的な生成経路も提案しました。


天然のヤマブシタケからヘリセノン類を初めて発見なされた静岡大の河岸洋和先生は、私たちが示した一連の合成経路が「生合成経路」としても妥当であり、副生成物として単離したクロマン型分子やフラン型分子、またそれらの前駆体であるエポキシド中間体も実際の天然ヤマブシタケに含まれるであろう、と仮説を立てました。


実際に河岸先生らの研究グループは、再び天然ヤマブシタケから抽出・単離作業を行い、そこで得られた各画分を宇都宮大の謝先生に提供して質量分析を行いました。


分析のエキスパートである謝先生は、河岸先生らが精製したヤマブシタケの画分に、合成副産物であるクロマン型分子、フラン型分子、エポキシド中間体などが含まれていることを突き止めました。さらに、今までに発見されていない分子イオンピークも見つけ、その分子がヘリセノンZやクロマン型分子の脱水生成物であると予測しました。


その報告を受け、再び私たちの研究室では、推定天然物である脱水生成物の合成に取り組みました。全合成したヘリセノンCからヘリセノンZやクロマン型分子を再び合成し、それらの脱水反応を詳細に検討しました。


その結果、5員環構造のヘリセノンZからも6員環構造のクロマン型分子からも同じ脱水化合物が生じることを見つけ、謝先生の検出なされた新規天然物は、5員環構造であるヘリセノンZの直接脱水体であるとの仮説を得ました。


私たちは合成サンプルを河岸先生に提供し、それを標準試料として再び分析をしていただきました。その結果、未知分子のクロマト保持時間や質量ピークは私たちが合成したサンプルのものと一致し、謝先生の検出した新規天然物はヘリセノンZの直接脱水体であると判明しました。


京都府立大の長井先生は、マウス神経芽細胞腫を用いて新規に見出されたヘリセノンZ脱水体やエポキシド中間体の神経保護効果を検証しました。残念ながら新規天然物に保護効果は見られませんでしたが、構造活性相関に関する重要な知見を得ることができました。


私たちの合成研究と河岸先生の独創的な着想により開始した共同研究ですが、合成研究で得た副生成物や生合成経路仮説を、再び天然物の解析にフィードバックして新たな分子の発見や存在証明につなげた例はほとんどありません。このような研究アプローチは、新たな天然物の発見や生合成経路の解明だけではなく、自然界の生物に含まれる極微量な成分の分析にも役立つものです。


憧れの河岸先生と肩を並べて論文を発表できたことは、この上のない幸せです。筆頭著者の王さん、共同研究者の謝先生、長井先生、呉先生をはじめ、多くの方々のお世話になりました。合成研究では、昨年3月に卒業した山口君と二人三脚で、予想しない結果にも悩みながら、二人で知恵を絞りつつサンプルを合成しました。多くの苦労がありましたが、こうしてまとまった成果を公表することができ、大変嬉しく思います。


論文のタイトルにある「Interdisciplinary」という用語はあまり聞き慣れないと思いますが、辞書で調べると「複数の学問領域に関わる研究をすること。学際的。」とでてきます。「天然物化学」に関わる様々な学域の研究者が協力して一つの研究成果を導いたことは大変重要な点です。改めて、共同研究に参画できたことを心より嬉しく思います。


河岸先生のお力添えによりオープンアクセス論文(無料でダウンロード可能)として頂きましたので、是非ご覧ください。


*1月31日追記

河岸先生のご厚意でカバーグラフィックも作成して頂きました。ちょうどジャーナル名と重なってしまいましたが「天然ヤマブシタケの美しさ」もぜひご覧ください。



論文の概要図





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